読書百景

小学館のWEBメディア「読書百景」|紙、電子、点字、オーディオブックなど、本の味わい方は人それぞれ。これからの読書のかたちを提案します|ノンフィクション、エッセイのほか新刊情報も|毎週月曜、時々金曜更新|お問い合わせ→http://p.sgkm.jp/dokushohyakkei

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  • 読書バリアフリー

    17本

    紙の本、電子書籍、オーディオブック、点字…本の味わい方は人それぞれ。これからの読書のありかたや、読書バリアフリーに関する話題を発信します。

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    ルポルタージュや調査報道など、取材を伴う作品を中心にアップします。

  • 鈴木成一と本をつくる

    9本

    ブックデザイナー鈴木成一さんによる「超実践 装丁の学校」授業レポートを中心に、装丁に関する記事をアップします。

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    ご自身の経験や日常に根差した作品をアップしています。

  • 【有料】一九八四+四〇 ウイグル潜入記(西谷格)

    10本 ¥500

    本連載は、上海在住経験があり、民主化デモが吹き荒れた香港のルポルタージュなどをものしてきた西谷格氏による、中国・新疆ウイグル自治区の滞在記です。少数民族が暮らす同地は、中国当局による監視が最も厳しい地として知られています。

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鈴木成一と本をつくる【Season2】「”タイポグラフィの名手”水戸部功、見参」#3

フォーカスを合わせ、同時にピントをぼかす  2024年末に開講した「装丁の学校 第二期」は、早くも折り返しだ。1月30日に第3回の講義が行われた。  今回は、特別講師を迎えている。タイポグラフィを最大の武器としている装丁家の水戸部功だ。マイケル・サンデルのベストセラー『これからの「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学』(早川書房)や、テッド・チャンのSF『息吹』(同)のカバーを思い浮かべてもらえれば、その際立った個性に思い当たるだろう。特別講師に迎えた理由を、鈴

頭木弘樹さん「誰一人取りこぼさないことこそ文学の本質」ルポ 読書百景 #9

文学は命綱のようなレベルで必要とされ得る 『絶望名人カフカの人生論』の編訳や『食べることと出すこと』などの著者で、「文学紹介者」としてエッセイを執筆してきた頭木弘樹さん。彼は大学三年生のときに潰瘍性大腸炎という難病となり、以後、13年間にわたる闘病生活を送った。  大腸に激しい炎症が生じるこの難病は、症状がひどくなるとベッドから動くことができない。当時、20歳だった頭木さんは病院の医師から、「これからは両親に面倒を見てもらうしかない」とさえ告げられたという。  そのなか

横田増生さん「自分の原稿を何度も”読み上げ機能”に通すことで、ようやく編集者に渡すことができる」ルポ 読書百景 #8

「立花は」と「立花な」を混同  ジャーナリストの横田増生さんは、「潜入取材」によって企業や組織の内部に入り込み、その実態を内側から描き出す作品で高く評価されてきた。例えば、謎に包まれていたアマゾンの物流倉庫に潜入し、課せられるノルマや徹底した業務管理の現場をルポした『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影』、ユニクロの店舗に潜入して現場の実態を描いた『ユニクロ潜入一年』。他にも2020年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営の選挙ボランティアとして活動し、当時のトランプ現象を

堀口里奈さん「昔読んだ本も、新たな読み方から楽しめる」ルポ 読書百景 #7

ディスレクシアは 「見えない障害」  筑波大学大学院で学ぶ堀口里奈さんは、読み書き障害と聴覚過敏を抱えながら、自身の学びと研究に向き合う大学院生だ。現在、25歳の彼女は、特に英語やカタカナに対する読み書きの困難を抱えている。 「文字を読むことに負荷を感じます。特にカタカナとアルファベットは読みにくく、文字を追うだけで疲れてしまうことが多いです」  彼女のこの読み書きの困難は、高校2年生のときに「読み書き障害」(ディスレクシア)と診断されるまで、周囲からは認識されていなか

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水谷竹秀「父親は遺体を棺から出そうとした」 叫び リンちゃん殺害事件の遺族を追って #5

司会を務めるはずだったリンちゃん  その時の光景を、こんなふうに語ってくれる人がいた。 「霊安室でハオさんは泣き叫び、暴れているような感じでした。自分の娘が殺されたら誰だっておかしくなりますよ。そこはベトナム人でも日本人でも同じでしょう。リンちゃんの遺体を棺から出そうとして警察官に止められていましたね」  埼玉県にある葬儀社の代表取締役、F氏である。事件発生から2年以上が経過した夏の日、私は日本で亡くなったベトナム人技能実習生の取材で同社を訪れた。その際、F氏の口からリ

村上千佳(助産師)×コンゴ「豊穣な大地ゆえに人びとは血を流す」紛争地の仕事 #3前編

全派遣18回  彼女は取材場所に、着物姿で現れた。  2024年7月上旬、国境なき医師団(MSF)のオフィス。村上千佳は、クリーム色の生地に、繊細な糸が描く大柄の蒼い花が散りばめられた着物をまとい、翠の紋紗を羽織っていた。村上と初めて出会ったのは15年ほど前になる。対面で会うとなると、今日で5回目くらいだろうか。そのたびに村上の和服姿を目にしてきた。梅雨を清々しく表現しているような色合いに、思わず見惚れてしまった。  村上が1年のほとんどをMSFの現場で過ごす助産師であ

今村剛朗(救急医)×パレスチナ・ヨルダン川西岸地区「医療妨害は本当に起きていた」紛争地の仕事 #2後編

救えない命はある  研究や公衆衛生を含め、医師として様々な顔を持つ今村だが、臨床においては救急の道を選ぶことに迷いはなかった。 「救急では専門科を問わず、多種多様な症例に対応します。例えば脳内出血や心筋梗塞の患者もいれば、感染症や小児患者も診ます。そこが医師としての醍醐味でもあります。原因が分からない、でも苦しんでいる。そんな患者の身体の中で何が起きているのかという、謎解きをしなくてはいけないこともあります。それが僕は好きなのだと思います」  もともと物事の成り立ちを理

水谷竹秀「変わり果てた同級生を想う」 叫び リンちゃん殺害事件の遺族を追って #4

 7年前、起きたこと  彼らは今、7年前に起きたあの日のことをどのように受け止めているのだろうか。    当時の記憶を胸に仕舞い込んだまま、成長し続けている子供たちがいる。それはリンちゃんと同じ教室で机を並べ、勉強をともにした同級生たちだ。まだ小学3年生だった彼らにとって、人間の死や人が殺されるという現実はどのように映り、そして理解されていったのか。もしくは理解されなかったのか。   リンちゃんが松戸市立六実第二小学校へ転校してきたのは、3年生の3学期からである。その時

鈴木成一と本をつくる

ブックデザイナー鈴木成一さんによる「超実践 装丁の学校」授業レポートを中心に、装丁に関する記事をアップします。

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鈴木成一と本をつくる【Season2】「デザイナーの勇み足は、編集者からすると品がない」#2

私たちと地続きの監視社会  2025年も1ヶ月が過ぎようとしている。ドナルド・トランプの大統領再就任。ガザ地区の停戦合意とヨルダン川西岸への攻撃激化。終わりの見えないウクライナ戦争。ユン・ソンニョル大統領の戒厳令宣布をめぐる韓国の混乱……。“戦時下”の国際情勢に心を痛める日々は、まだ終わりそうにない。  そんな時代だからこそ、世界をより良くするために、たとえ微力でも私たちは自分ひとり分の力を行使したい。そのためにはまず、知ることが欠かせない。だから私たちは読書をする。SN

鈴木成一と本をつくる【Season2】「なんでAIが盛り上がってるか、わかる?」#1

異例尽くめの講義、再び  前代未聞の講義が、早くも帰ってきた。  2024年の夏に開催された「鈴木成一 超実践 装丁の学校」は、下北沢の書店B&Bを舞台に、刊行前の書籍『誘拐ジャパン』(横関大)を課題作とし、受講生たちが各々デザイン案をプレゼンする全5回の講義だった。最終講評で最優秀作に選ばれた佐々木信博のデザインが、実際の出版にも採用された。  書籍の売れ行きを大いに左右するブックデザインを受講生たちに委ねるという著者と編集者、出版社の心意気に驚かされたが、それもすべ

鈴木成一と本をつくる#5後編 「叩かれれば叩かれるほど鍛えられていく」

タイトルは発明である  この夏の東京は、強烈な雷雨に見舞われることが多かったが、この日も例外ではない。講義中には屋根を叩く雨音と、壁と床を揺らす雷の振動が、会場の緊張感をいやおうなしに高めていく。  初回講義で『誘拐ジャパン』のテーマを「みんなが共犯者」と喝破したのは小守いつみであった。本作の担当編集である柏原航輔も、この言葉を「読んでるあなたも共犯者」と言い換えてオビに採用したほどだ。  本の個性を一言で言い当てた小守は、群衆たちを描いたイラストでその個性を表現してみ

鈴木成一と本をつくる#5前編 「みなさんの装丁をいろいろイジりたおしてきましたけど」

ついに最終授業!  30年以上にわたって1万冊超の本を装丁してきたブックデザイナー・鈴木成一による「超実践 装丁の学校」がついに最終授業を迎える。全5回の学び舎が始まったのは6月24日のことであった。  15人の受講者たちは、小説家・横関大が今秋刊行する予定の小説『誘拐ジャパン』のゲラを読み、その装丁案を提出。鈴木の講評を受けて、ほぼ隔週で開かれる次回授業までにブラッシュアップするという過酷な講義だ。  紙の本の未来が危ぶまれるなか、鈴木は危機感を持って、この試みをスタ

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野口あや子「MC泥眼いざ勝負」天才歌人、ラップ沼で溺れ死ぬ #5

◆今月の一首 名乗るならMC泥眼、くろがねのマイクを握り吐き出す声は 一回戦は激韻踏みラッパーと  2024年7月21日、その日は、「伏見サイファー祭」と銘打たれたコラボイベント会場、納屋橋R U S Hに一番乗りで着いていた。宵っ張りで朝も遅い私がその日ばかりは早々に目が覚め、顔を洗い歯を磨き、朝ごはんを食べ、化粧をして、いつものユニフォームの着物に着替えてもまだ十時半。二時の開催にはまだ時間がある。急いで用意しすぎたか、ソワソワして部屋の片付けでもしようかと思ったけ

野口あや子「春はあけぼの シーシャようやく白くなりゆく」天才歌人、ラップ沼で溺れ死ぬ #4

◆今月の一首 Bitchと言わずbad galsと言い換えるフィメールラッパーどこも煉獄 誰よりファミチキの美味しさを知った 「ていうか野口さん、フィメールラッパーになろうとしてますよね!?」  インタビュアーが声を上げたのは名古屋市のある文化施設。その日は名古屋市文化振興事業団が発行している「なごや文化情報」の「zoom up」という新鋭作家を紹介するコーナーのインタビューを受けていた。名古屋市のインタビューということもあって、ブラウスにテーラード姿で現れた私に、イ

野口あや子「大好きなお母さんと愛しい彼女とビッチとギャルしか出てこねえ」天才歌人、ラップ沼で溺れ死ぬ #3

◆今月の一首 リズムキープリズムチェンジの鮮やかにフーディーのなか揺れるからだは 喧嘩とチンゲとクソにまみれた健気な奴ら 「はじめまして、〇〇です。02です」 「〇〇です。09です。中学生です」 「〇〇です。07です。高校生です」  伏見サイファーのラインオープンチャットの参加者の数字を見て一瞬意味がわからなくなり、ややあって納得した。2002年生まれ、2009生まれ、2007年生まれだ。こんなところで1987年生まれなんて書いたら昭和の遺物みたいなものだろう。薄々感

野口あや子「とりあえずride on してこのままgo on」天才歌人、ラップ沼で溺れ死ぬ #2

◆今月の一首 Awich のtype beat に声を乗せくずし字のごとく声をくねらせ  九月、私は中部国際空港にうずくまっていた。久しぶりの遠出。しかもいきなりの飛行機。しばらくは男性の声も怖くてちょっとした外出さえままならなかったというのに、急にAwichの歌詞に出てきた「うるまの煙草」を吸うために沖縄? しかも行くといっても沖縄でAwichのライブがあるわけでもない。しかもそのあと沖縄に興味を持って調べまくったせいで、勢い余ってスキューバダイビングの体験まで予約して

【有料】一九八四+四〇 ウイグル潜入記(西谷格)

本連載は、上海在住経験があり、民主化デモが吹き荒れた香港のルポルタージュなどをものしてきた西谷格氏による、中国・新疆ウイグル自治区の滞在記です。少数民族が暮らす同地は、中国当局による監視が最も厳しい地として知られています。

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西谷格「女の子は後ろを見ない」一九八四+四〇 ウイグル潜入記 #10

心と心が繋がっている  食事を終えると、外で話そうと提案された。食事代は私が奢ることにして、店を出た。ちょうど歩道にテラス席があった。午後の日差しは強烈だが、パラソルの日陰がある。 「新疆っていうのは、面白い場所なんだ」  そう言って、彼はテーブルの真ん中を指差しながら地理の講義をしてくれた。 「ここから一番近い海は太平洋ではなくインド洋。上海までは3500キロもあるし、北京も3000キロ。でも、300キロも走れば中央アジアの国々に出られるんだ。そして、西へ3000キ

西谷格「死体のように寝転ぶ男たち」一九八四+四〇 ウイグル潜入記 #9

ウイグル族の民家  ビリヤード台は時間貸しで、そろそろ店を出る時間になっていた。 「モスクを見たいんだけど、この近くにあるかな?」 「いくつかあるよ。案内する」  ビリヤード場を出て、雑貨屋や食堂などが並ぶ道をしばらく歩くと、「愛党愛国」と書かれた横長の赤い看板と、中国国旗を高く掲げた茶色い門が見えた。門は彫刻が美しいのだが、看板のほうが明らかに目立っている。入り口には「自治区和諧寺観教堂」と金属プレートが貼られていた。写真を撮ろうとすると若者は「あまり撮らないほうが

西谷格「コーランはすべて燃やした」一九八四+四〇 ウイグル潜入記 #8

◆4章 ヤルカンド「二日月」のレストラン  ホータンで見られそうなモスクは回れたので、次の街を目指すことにした。オーストラリア戦略政策研究所のウイグルマップで破壊されたモスクや収容所の多そうな街に目星を付け、莎車(ヤルカンド)という小さな町を選んだ。それらを意味する赤や黄色の丸印が、地図上でとりわけ多かったのだ。  ホータンからヤルカンドまでは、汽車で3時間ほどだった。少し贅沢かとは思ったが、一等の寝台車を予約した。個室の4人部屋の上段ベッドから下を見下ろすと、3人の中高

西谷格「"神なき宗教"を信じる人びと」一九八四+四〇 ウイグル潜入記 #7

「あなたはアッラーを信じていますか?」  ホータンでもこれまでと同様、店先などで出会ったウイグル人と挨拶をしながら中国語で「イスラム教を信仰しているか?」と質問したのだが、ほとんど会話は成立しなかった。中高年以上は中国語をほとんど解さないため元より意思疎通はあきらめていたが、20代ぐらいのある程度中国語が通じる相手に的を絞っても、どうにもうまくいかないのだ。軽い雑談を交わして中国語が通じることを確認した上で、明瞭な発音で「イスラム教を信じていますか?」「モスクに行くことはあ