読書百景

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小学館学芸チームのWEBメディア「読書百景」|紙、電子、点字、オーディオブックなど、本の味わい方は人それぞれ。これからの読書のかたちを提案します|ノンフィクション、エッセイのほか新刊情報も|毎週月曜更新|お問い合わせ→http://p.sgkm.jp/dokushohyakkei

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    紙の本、電子書籍、オーディオブック、点字…本の味わい方は人それぞれ。これからの読書のありかたや、読書バリアフリーに関する話題を発信します。

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    エッセイやノンフィクションなど、連載作品をまとめました。ここに収録された作品は、いずれ単行本として出版する予定です。

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  • 7本

出口治明さん「脳出血を経て、僕の何が変わったか」ルポ 読書百景 #5

「3日が大学、3日がリハビリ、毎日1冊は本を読む」  立命館大学アジア太平洋大学(APU)の前学長の出口治明さんが、脳出血を発症したのは2021年1月のことだった。滞在中だった福岡のホテルで発作を起こして病院に搬送され、命に別状こそなかったが、右半身の強い運動麻痺と失語症の症状が残った。その後、APUへの復職を目指してのリハビリの様子は、自著である『復活への底力』で詳細に語られている。  そのなかに、強く印象に残った場面がある。出口さんはリハビリ病院で身体の機能の回復を

愼允翼さん「ルソーの生き方に少しでも近づきたい」ルポ 読書百景 #4後編

東大にとっても”きっかけ”となったはず 東京大学大学院に通う愼允翼さんは、いま、フランス文学の研究室でジャン=ジャック・ルソーなどフランス思想や哲学を専攻している。  全身が動かなくなる難病の「脊髄性筋萎縮症(SMA)」とともに生きてきた彼は、これまでも学校で「学び」のために様々な工夫をしてきた。たとえば、小中学生のときのテストでは、学校側との交渉によって、介助員に口頭で伝えた解答を代筆してもらう形をとった。また、高校受験では別室でのパソコンの使用や試験時間の延長をやはり学

愼允翼さん「本は”孤独”に読みたいけれど」ルポ 読書百景 #4前編

「本を読む」という行為の持つ意味 東京大学大学院でフランス文学を専攻、思想家のジャン=ジャック・ルソーなどの研究をしている愼允翼さんは、難病の「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を患っている。この病気は全身の筋力の低下によって体が動かなくなるもので、普段の生活では24時間の介護が必要だ。彼は右手の先以外が自由に動かせないため、日常生活では20人ほどの介助者がシフト制で彼の介助を行っている。  その日、愼さんへのインタビューは、陽当たりのよい屋外のテラス席で行われた。彼には2人の男性

佐木理人さん「障害は“持つ”か、“ある”か」ルポ 読書百景 #3後編

 点字毎日の記者である佐木理人さんが、毎日新聞社に入社したのは2005年のことだった。高校を卒業後、一浪して外国語大学で英語の文法を専攻した佐木さんには、研究者の道に進みたいと考えていた時期もあった。だが、大学院の修士課程でその道は諦め、社会に出てからは障害者の地域生活を支援するカウンセラーや、大学・専門学校で点字の授業の講師をするようになったという。(取材/文・稲泉連、撮影・黒石あみ) 触読校正の面白さ 私は30歳を過ぎるまで、いくつかの仕事を掛け持ちしていました。その

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  • 20本

西谷格「110番したら54秒で警察はやってくる」一九八四+四〇 ウイグル潜入記 #2

◆1章 ウルムチホテルのフロントで  2023年7月、中国・天津の浜海国際空港から乗った奥凱航空3099便は片道1316元(約2万6320円、1元=約20円)と日本に帰国するより高額で、新疆ウイグル自治区の首府ウルムチまでの航行距離は約2500キロと天津ー東京間を上回った。途中、寧夏回族自治区の地方都市・銀川で2時間ほど駐機したのち、丸一日かけてウルムチの地窩堡国際空港に到着した。機体と到着ゲートをつなぐトンネル状のボーディングブリッジを進むと、ブリッジ内の壁に「新疆銀行」

村上千佳(助産師)×コンゴ「レイプは戦争の武器である」紛争地の仕事 #3後編

女性たちを「家族の恥」に  MSFの助産師・村上千佳によれば、兵士らが女性に性暴力を働くのは、実は性のはけ口などではないという。 「全ては、この土地に世界的に豊かな鉱物資源が埋蔵されていることにあるんです」  武装勢力にとって、鉱物資源に絡む富と利権は絶対に手に入れたいものだ。それにはその土地を支配しなくてはならない。だから先住民を追い出す必要がある。そのための手段として、性暴力が使われてきた。働き手である土地のキーパーソンである女性たちに性暴力を加え、「家族の恥」とす

鈴木成一と本をつくる#5後編 「叩かれれば叩かれるほど鍛えられていく」

タイトルは発明である  この夏の東京は、強烈な雷雨に見舞われることが多かったが、この日も例外ではない。講義中には屋根を叩く雨音と、壁と床を揺らす雷の振動が、会場の緊張感をいやおうなしに高めていく。  初回講義で『誘拐ジャパン』のテーマを「みんなが共犯者」と喝破したのは小守いつみであった。本作の担当編集である柏原航輔も、この言葉を「読んでるあなたも共犯者」と言い換えてオビに採用したほどだ。  本の個性を一言で言い当てた小守は、群衆たちを描いたイラストでその個性を表現してみ

鈴木成一と本をつくる#5前編 「みなさんの装丁をいろいろイジりたおしてきましたけど」

ついに最終授業!  30年以上にわたって1万冊超の本を装丁してきたブックデザイナー・鈴木成一による「超実践 装丁の学校」がついに最終授業を迎える。全5回の学び舎が始まったのは6月24日のことであった。  15人の受講者たちは、小説家・横関大が今秋刊行する予定の小説『誘拐ジャパン』のゲラを読み、その装丁案を提出。鈴木の講評を受けて、ほぼ隔週で開かれる次回授業までにブラッシュアップするという過酷な講義だ。  紙の本の未来が危ぶまれるなか、鈴木は危機感を持って、この試みをスタ

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  • 5本

編集日誌 #5 装丁なんてそんなもの?

 特別な用事がない限り普段は訪れない下北沢は、降り立つ度に装いがかわっています。再開発が加速度的に進んでいる。とはいえ2ヶ月ほどの間に、打ち合わせを含めると10回弱も訪れると、ちょっとは街に馴染みが出てきます。  ブックデザイナーの鈴木成一さんによる「装丁の学校」が8月7日に最終授業を迎えました。作家・横関大さんの新作『誘拐ジャパン』のカバー案を題材に、実践形式で教えるワークショップです。  その模様を同時進行的に伝えた連載を一読してもらえば、全5回の授業がデザイナーやイ

編集日誌 #4 装丁家は読む

 昨日、ついに鈴木成一さんの「装丁の学校」(本屋 B&B)が開講されました。初回から”超実践”です。前置きの概論はそこそこに、課題として事前に渡したゲラについて受講生が現時点の装丁イメージを発表、それに対して鈴木さんが個別にコメントを出していきました。両者の緊張感漂うやりとりは、後日、お届けする連載「鈴木成一と本を作る」にて、詳細を紹介します。  ところで、装丁家はどのように本のデザインを決めるのでしょう。手がかりとなるのは作品そのもの。鈴木さんは、編集者との打ち合わせ前に

編集日誌 #3 情熱と執念

 装丁家・鈴木成一さんが”本気”で後進を指導する「装丁の学校」、そのプレイベントとなるトークショーが去る6月13日、本屋B &Bにて開かれました。  良い装丁とは何か。鈴木成一さんや、同じく著名なブックデザイナーの水戸部功さん、albireoさん(西村真紀子さん・草苅睦子さん)が実際に本を手にしながら、各々の装丁論を披露しあう濃密な時間でした。  終盤のQ&Aでは参加者から、装丁家が編集者に求める姿勢についての質問がありました。鈴木さんはずばり情熱ーーつまりは編集者はこ

編集日誌 #2 創刊ラインナップのこと

 先週、「読書百景」が無事オープンし、まずはひと安心です。好意的な反応もたくさんいただきました。ありがたい限りです。  遅ればせながら、創刊にあわせて連載を開始した作品についてご紹介します。まずは稲泉連さんの『ルポ 読書百景』。媒体名を付したタイトルが示す通り、看板連載です。「読書」という行為に、新たな光をあてたいという意気込みで企画しました。  筆者の稲泉連さんとは、被災地の書店をルポしたノンフィクション『復興の書店』からのお付き合いです。稲泉さんは丁寧で地道な取材と、