読書百景
ブックデザイナー鈴木成一さんによる「超実践 装丁の学校」授業レポートを中心に、装丁に関する記事をアップします。
ルポルタージュや調査報道など、取材を伴う作品を中心にアップします。
紙の本、電子書籍、オーディオブック、点字…本の味わい方は人それぞれ。これからの読書のありかたや、読書バリアフリーに関する話題を発信します。
ご自身の経験や研究に基づく作品を中心にアップしています。
本連載は、上海在住経験があり、民主化デモが吹き荒れた香港のルポルタージュなどをものしてきた西谷格氏による、中国・新疆ウイグル自治区の滞在記です。少数民族が暮らす同地は、中国当局による監視が最も厳しい地として知られています。
異例尽くめの講義、再び 前代未聞の講義が、早くも帰ってきた。 2024年の夏に開催された「鈴木成一 超実践 装丁の学校」は、下北沢の書店B&Bを舞台に、刊行前の書籍『誘拐ジャパン』(横関大)を課題作とし、受講生たちが各々デザイン案をプレゼンする全5回の講義だった。最終講評で最優秀作に選ばれた佐々木信博のデザインが、実際の出版にも採用された。 書籍の売れ行きを大いに左右するブックデザインを受講生たちに委ねるという著者と編集者、出版社の心意気に驚かされたが、それもすべ
◆5章 イリ油断の産物 香港から上海、北京、新疆ウイグルへと徐々にリスクの高いエリアに身体を順応させるように移動していたせいで、鈍感になっていたのかもしれない。警察に何か聞かれても「旅行をしている」と答えれば法的な問題はなく、写真を撮るなと言われれば、素直に削除すればそれ以上面倒なことは起きなかった。 油断というのはいつも結果論で、言葉遊びみたいなものだ。たとえどんなに注意散漫でも、何も問題が起きなければ「大胆だ」「やることに無駄がない」という評価になり、油断とは見做
「その日が近付いてくるのが怖いんです」 朱美(あけみ)さん(50歳)が不安そうな顔で施術室に入ってきました。聞けば、近々、友人と日帰り旅に行く予定があるのだそうです。 「もちろん、楽しみだし、楽しみたいんです。でも、不安のほうが大きくて、その日が近付いてくるのが怖いんです」と涙目で訴えます。 この仲良し旅は次回で3回目とのことですが、1回目は温泉入浴後、気分が悪くなり嘔吐(おうと)。ランチはキャンセルしたそうです。友人の「誰だって体調が悪い日はある!」という言葉に救われ
「立花は」と「立花な」を混同 ジャーナリストの横田増生さんは、「潜入取材」によって企業や組織の内部に入り込み、その実態を内側から描き出す作品で高く評価されてきた。例えば、謎に包まれていたアマゾンの物流倉庫に潜入し、課せられるノルマや徹底した業務管理の現場をルポした『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影』、ユニクロの店舗に潜入して現場の実態を描いた『ユニクロ潜入一年』。他にも2020年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営の選挙ボランティアとして活動し、当時のトランプ現象を
不安。それはときに呪いや妬みといった黒い感情を引き寄せる、やっかいな感情。病気ではないので明確な治療法はないし、周囲の理解や共感も得にくいので沼にハマると苦しくなります。やがて心は疲弊し、血流は悪化、体調は最悪に。心と体は一体だからです。女性鍼灸師のやまざきあつこさんの元には、そんな患者さんがたくさん訪れます。この連載では、8万人におよぶセッションを通じて彼女が導きだした、薬や医療に頼らないでそこから這い出る方法のヒントを伝えます。 ☆第1話はこちらから。第7話はこちらから。
◆今月の一首 Bitchと言わずbad galsと言い換えるフィメールラッパーどこも煉獄 誰よりファミチキの美味しさを知った 「ていうか野口さん、フィメールラッパーになろうとしてますよね!?」 インタビュアーが声を上げたのは名古屋市のある文化施設。その日は名古屋市文化振興事業団が発行している「なごや文化情報」の「zoom up」という新鋭作家を紹介するコーナーのインタビューを受けていた。名古屋市のインタビューということもあって、ブラウスにテーラード姿で現れた私に、イ
どうやって断ろうと考えただけでお腹が痛くなる「断れない人」というのがいます。相手が強引すぎるとか、断った後の気まずい空気が苦手だとか、嫌われたくないとか、理由はいろいろあると思います。それで、ついつい押し付けられたという結果に陥りがちなんですが、問題は「その後の気持ち」。 結果的にせよ「断らない」ということは、相手からのなんらかの頼みごとを承諾しているのですが、これが困ったもので、大抵の場合「良かった! 断らなくて」にはならないものです。それも、引き受けてから時間が経
ディスレクシアは 「見えない障害」 筑波大学大学院で学ぶ堀口里奈さんは、読み書き障害と聴覚過敏を抱えながら、自身の学びと研究に向き合う大学院生だ。現在、25歳の彼女は、特に英語やカタカナに対する読み書きの困難を抱えている。 「文字を読むことに負荷を感じます。特にカタカナとアルファベットは読みにくく、文字を追うだけで疲れてしまうことが多いです」 彼女のこの読み書きの困難は、高校2年生のときに「読み書き障害」(ディスレクシア)と診断されるまで、周囲からは認識されていなか
サラッと言われた「幹事をやってくれるのはA型だよ!」にウンザリ 人間って、つくづく分類するのが好きな生き物だと思います。性別、年齢、人種、出身地、星座、干支(えと)などなど……。挙げればキリがないほど、ありとあらゆることを分類し、しかも、勝手にこうだ! と決めつけがち。 例えば、「だよね!? 女子校出身だと思った!」「ひとりっ子はわがままだから」なんて会話、聞いたことある人、多いんじゃないでしょうか。こんな感じで、人間をグループごとにサクッと分けられたら、ある意味、便
◆今月の一首 リズムキープリズムチェンジの鮮やかにフーディーのなか揺れるからだは 喧嘩とチンゲとクソにまみれた健気な奴ら 「はじめまして、〇〇です。02です」 「〇〇です。09です。中学生です」 「〇〇です。07です。高校生です」 伏見サイファーのラインオープンチャットの参加者の数字を見て一瞬意味がわからなくなり、ややあって納得した。2002年生まれ、2009生まれ、2007年生まれだ。こんなところで1987年生まれなんて書いたら昭和の遺物みたいなものだろう。薄々感
口に違和感で「口腔がん」、ドキドキすれば「心臓が痛い」で疲れ果て…… 私たちの不安をあおる行為のひとつに「検索」があります。今はスマホがあれば、わからないことも一発回答という時代。画面の中は“専門家”であふれていますから、頼りたくなるのも無理はありません。けれども、その行為が“不安沼”にハマり込むキッカケと化すことがあるのです。 高校生のときに実のお母さんをがんで亡くした桃子さん(当時39歳)の話をしましょう。桃子さんの胸には今でも消えない寂寥(せきりょう)感があるそう
心と心が繋がっている 食事を終えると、外で話そうと提案された。食事代は私が奢ることにして、店を出た。ちょうど歩道にテラス席があった。午後の日差しは強烈だが、パラソルの日陰がある。 「新疆っていうのは、面白い場所なんだ」 そう言って、彼はテーブルの真ん中を指差しながら地理の講義をしてくれた。 「ここから一番近い海は太平洋ではなくインド洋。上海までは3500キロもあるし、北京も3000キロ。でも、300キロも走れば中央アジアの国々に出られるんだ。そして、西へ3000キ
更年期世代の不調は制御できないからやっかい ある日、施術中の菊乃さん(48歳)が苛立ちを抑えきれないといった様子で語り出しました。 「礼儀知らずが多過ぎです!」 聞けば、ここ最近、立て続けに挨拶を無視される出来事が重なったそうです。 仕事先の後輩に挨拶を返さない人がいるらしく、その人を見るだけでイライラが募るといいます。他にも、通い出したヨガ教室のロッカールームでも挨拶をしない人に遭遇したとかで、「あり得ない!」と怒り心頭のご様子です。 菊乃さんの症状は肩こ
ウイグル族の民家 ビリヤード台は時間貸しで、そろそろ店を出る時間になっていた。 「モスクを見たいんだけど、この近くにあるかな?」 「いくつかあるよ。案内する」 ビリヤード場を出て、雑貨屋や食堂などが並ぶ道をしばらく歩くと、「愛党愛国」と書かれた横長の赤い看板と、中国国旗を高く掲げた茶色い門が見えた。門は彫刻が美しいのだが、看板のほうが明らかに目立っている。入り口には「自治区和諧寺観教堂」と金属プレートが貼られていた。写真を撮ろうとすると若者は「あまり撮らないほうが
起立性調節障害の方にみられる環境への“過剰適応” 椿さん(20歳)は、高1の夏休み明けから、学校に行けなくなってしまいました。登校しようとすると鉛のように体が動かなくなるのだといいます。 椿さんの診断名は「起立性調節障害」。簡単に言えば、血圧や心拍を調整している自律神経の機能がうまく働いてくれない症状です。横になっている状態から立とうとすると、立ちくらみやめまいを起こしやすいという特徴があります。同時に倦怠感や頭痛、腹痛を感じることが多いので、学校や仕事に行きたくても、
◆今月の一首 Awich のtype beat に声を乗せくずし字のごとく声をくねらせ 九月、私は中部国際空港にうずくまっていた。久しぶりの遠出。しかもいきなりの飛行機。しばらくは男性の声も怖くてちょっとした外出さえままならなかったというのに、急にAwichの歌詞に出てきた「うるまの煙草」を吸うために沖縄? しかも行くといっても沖縄でAwichのライブがあるわけでもない。しかもそのあと沖縄に興味を持って調べまくったせいで、勢い余ってスキューバダイビングの体験まで予約して