記事一覧
編集日誌 #5 装丁なんてそんなもの?
特別な用事がない限り普段は訪れない下北沢は、降り立つ度に装いがかわっています。再開発が加速度的に進んでいる。とはいえ2ヶ月ほどの間に、打ち合わせを含めると10回弱も訪れると、ちょっとは街に馴染みが出てきます。
ブックデザイナーの鈴木成一さんによる「装丁の学校」が8月7日に最終授業を迎えました。作家・横関大さんの新作『誘拐ジャパン』のカバー案を題材に、実践形式で教えるワークショップです。
村上千佳(助産師)×コンゴ「豊穣な大地ゆえに人びとは血を流す」紛争地の仕事 #3前編
全派遣18回
彼女は取材場所に、着物姿で現れた。
2024年7月上旬、国境なき医師団(MSF)のオフィス。村上千佳は、クリーム色の生地に、繊細な糸が描く大柄の蒼い花が散りばめられた着物をまとい、翠の紋紗を羽織っていた。村上と初めて出会ったのは15年ほど前になる。対面で会うとなると、今日で5回目くらいだろうか。そのたびに村上の和服姿を目にしてきた。梅雨を清々しく表現しているような色合いに、思
水谷竹秀「なぜ遺族の肉声を伝えなければならないのか」 叫び リンちゃん殺害事件の遺族を追って #3
インタビューは滞る
「私の娘は殺されました」
目の前にいる人がそんな過去を持っていたら、どんな言葉を掛けたらいいだろう。
ハオさんとの出会いを機に、遺族感情の複雑さについて考えるようになった。その他いくつかの事件の遺族にも取材を重ねた。あれから6年が経つが、その問いに対する答えは未だに見つかっていない。そもそも正解なんてないだろう。ただ、決めていることがひとつだけある。
「お気持ちはわ
アンナ・ツィマ「東京塔」ニホンブンガクシ 日本文学私 #4
ここは昭和?
私は東京タワーを一度だけ見物したことがある。それは2010年の7月、初めて来日した頃だった。東京スカイツリーはまだ竣工しておらず、どんなガイドブックにも東京タワーしか載っていなかった。17歳の私は、テレビ放送や高層ビルの建設などに大した関心を持っていなかったが、東京を高いところから展望したいという気持ちはあった。友達がガイドブックで「境を越える〈東京の象徴〉」として紹介されていた