読書百景

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小学館学芸チームのWEBメディア「読書百景」|紙、電子、点字、オーディオブックなど、本の味わい方は人それぞれ。これからの読書のかたちを提案します|ノンフィクション、エッセイのほか新刊情報も|毎週月曜更新|お問い合わせ→http://p.sgkm.jp/dokushohyakkei

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記事一覧

清水純一さん「19歳で読書と出会い直すまで」ルポ 読書百景 #2

 読売新聞の論説委員を務める清水純一さんは、朝刊一面の名物コラム「編集手帳」の執筆者である。約460文字のスペースで社会事象を鮮やかに評することもあれば、蔵書から…

読書百景
3か月前
13

編集日誌 #4 装丁家は読む

 昨日、ついに鈴木成一さんの「装丁の学校」(本屋 B&B)が開講されました。初回から”超実践”です。前置きの概論はそこそこに、課題として事前に渡したゲラについて受講…

読書百景
3か月前
13

アンナ・ツィマ「アフター読」 ニホンブンガクシ 日本文学私 #2

再読で〈読み返る〉  初読は二度と繰り返せない。それゆえ自分が好きな本をまだ読んでいない相手が羨ましい。今読んでいる本を終わらせたくないと感じたりもする。  …

読書百景
3か月前
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編集日誌 #3 情熱と執念

 装丁家・鈴木成一さんが”本気”で後進を指導する「装丁の学校」、そのプレイベントとなるトークショーが去る6月13日、本屋B &Bにて開かれました。  良い装丁とは何か…

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3か月前
3

水谷竹秀「プロローグ」 叫び リンちゃん殺害事件の遺族を追って #1

プロローグ  暗闇の中に慟哭がこだましていた。  一人の男が悶え苦しんでいる。ノートパソコンのスクリーンには真っ暗な画像だけが映し出されており、時折、天井に取り…

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3か月前
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西村崇(内科医)×ギリシャ・サモス島 「苦しみの連鎖は一人では断てないけれど」紛争地の仕事 #1後編

「ガザに帰りたい、帰らせてくれ」  西村崇には忘れられない患者がいる。  毎日、診察室に来ては泣いていた妊娠4ヶ月の女性だ。シエラレオネから来たという。彼女は性暴…

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3か月前
26
清水純一さん「19歳で読書と出会い直すまで」ルポ 読書百景 #2

清水純一さん「19歳で読書と出会い直すまで」ルポ 読書百景 #2

 読売新聞の論説委員を務める清水純一さんは、朝刊一面の名物コラム「編集手帳」の執筆者である。約460文字のスペースで社会事象を鮮やかに評することもあれば、蔵書から抜き出した箴言を世相に当てこむこともある。「読むこと」「書くこと」のプロである彼は、自身の若い頃を振り返るとき、「本がどうしても読めない」というコンプレックスを抱えていた時期があったという。
「本だけではなくて、若い頃には文字を読むのに、

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編集日誌 #4 装丁家は読む

編集日誌 #4 装丁家は読む

 昨日、ついに鈴木成一さんの「装丁の学校」(本屋 B&B)が開講されました。初回から”超実践”です。前置きの概論はそこそこに、課題として事前に渡したゲラについて受講生が現時点の装丁イメージを発表、それに対して鈴木さんが個別にコメントを出していきました。両者の緊張感漂うやりとりは、後日、お届けする連載「鈴木成一と本を作る」にて、詳細を紹介します。

 ところで、装丁家はどのように本のデザインを決める

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アンナ・ツィマ「アフター読」 ニホンブンガクシ 日本文学私 #2

アンナ・ツィマ「アフター読」 ニホンブンガクシ 日本文学私 #2

再読で〈読み返る〉

 初読は二度と繰り返せない。それゆえ自分が好きな本をまだ読んでいない相手が羨ましい。今読んでいる本を終わらせたくないと感じたりもする。

 初読は冒険的だ。一方で私は〈再読〉も魅力的だと思う。久しぶりに小説を読み返すとき、頭の中に浮かんでくるのは小説の登場人物やスト―リーの出来事ではなく、昔の自分に他ならない。初めて読んだ頃の気持ちやムードは勿論のこと、文学に全く無関係な

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編集日誌 #3 情熱と執念

編集日誌 #3 情熱と執念

 装丁家・鈴木成一さんが”本気”で後進を指導する「装丁の学校」、そのプレイベントとなるトークショーが去る6月13日、本屋B &Bにて開かれました。

 良い装丁とは何か。鈴木成一さんや、同じく著名なブックデザイナーの水戸部功さん、albireoさん(西村真紀子さん・草苅睦子さん)が実際に本を手にしながら、各々の装丁論を披露しあう濃密な時間でした。

 終盤のQ&Aでは参加者から、装丁家が編集者に

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水谷竹秀「プロローグ」 叫び  リンちゃん殺害事件の遺族を追って #1

水谷竹秀「プロローグ」 叫び リンちゃん殺害事件の遺族を追って #1

プロローグ  暗闇の中に慟哭がこだましていた。

 一人の男が悶え苦しんでいる。ノートパソコンのスクリーンには真っ暗な画像だけが映し出されており、時折、天井に取り付けられた蛍光灯がぼやけて見える。音声はベトナム語のようだが、私には何を言っているのかさっぱり理解できない。画像の下のほうには字幕が表示されていた。

リンちゃんの父:父は無力でした。リンちゃんごめんなさい。リンちゃんはとても愛しています

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西村崇(内科医)×ギリシャ・サモス島  「苦しみの連鎖は一人では断てないけれど」紛争地の仕事 #1後編

西村崇(内科医)×ギリシャ・サモス島 「苦しみの連鎖は一人では断てないけれど」紛争地の仕事 #1後編

「ガザに帰りたい、帰らせてくれ」

 西村崇には忘れられない患者がいる。
 毎日、診察室に来ては泣いていた妊娠4ヶ月の女性だ。シエラレオネから来たという。彼女は性暴力被害者で、HIVに感染していた。経由地のトルコでは投獄され、暴力を振るわれていたのだという。服薬は投獄をきっかけに現在も中断されたままだ。お腹に赤ちゃんを抱えた身でどのように過酷なボートの旅を乗り切ったのだろうか。

 キャンプの収容

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