鈴木成一と本をつくる #0 はじめに
昨年8月末のある夜、スペイン料理屋でパエリアをつついていた時のことでした。隣でワイングラスを傾けていた装丁家・鈴木成一さんが、神妙な顔でポロッと言いました。
「……しかし、若い子にどう伝えていけばいいのかねぇ」
当時、私が所属していた文芸誌はウェブ化が決まっており、その日は、鈴木さんを編集部員で囲んでの“紙版”最終号の校了打ち上げでした。鈴木成一デザイン室に依頼していた雑誌のAD(アート・ディレクション)も、ウェブ化にあたって交替することになっていました。話題はおのずと