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編集日誌 #4 装丁家は読む

 昨日、ついに鈴木成一さんの「装丁の学校」(本屋 B&B)が開講されました。初回から”超実践”です。前置きの概論はそこそこに、課題として事前に渡したゲラについて受講生が現時点の装丁イメージを発表、それに対して鈴木さんが個別にコメントを出していきました。両者の緊張感漂うやりとりは、後日、お届けする連載「鈴木成一と本を作る」にて、詳細を紹介します。

 ところで、装丁家はどのように本のデザインを決めるのでしょう。手がかりとなるのは作品そのもの。鈴木さんは、編集者との打ち合わせ前に、テキスト(内容)を読み込みます。装丁家のなかには、テキストに引きずられてデザインの幅が狭まる、ゆえに読まない、もしくは冒頭だけ読むといった方もいます。装丁のアプローチは、多様であってしかるべきだと思います。いずれにしても、鈴木さんは読む。昨日、その理由を問うと、「ゼロから(その本に)のぞみたい」「自分がどう感じたかを重視したい」ためだと、仰っていました。

 これまで1万冊以上の本を手がけてきた鈴木さんは、いかほどの時間をそこに費やしてきたのか。それを考えると、頭がくらくらしてきます。当の鈴木さんに、いつゲラ(編集段階の紙面見本)を読んでいるのかを伺うと、朝起きてはゲラを読み、土日もゲラを読み、通勤途中もゲラを読んでいるとのこと。ことさらそれを強調するわけでなく”たんたん”と答えるあたりに、鈴木さんの、装丁家としての姿勢が滲み出ていました。

 昨日、受講生に読んでもらった作品は、この秋、小学館で出版予定のミステリです。それぞれの感想は本当に新鮮であり、いまだ編集途上にある作品の最終目的地を照らすものもありました。それにしても、ゲラをお渡ししてから約1週間で読了してくださった受講生には、頭が下がります。こちらも本気ガチで臨みます。

 どう読んだかはどうデザインするかに直結します。次回からは、実際に受講生の装丁案を発表してもらいます。心から楽しみにしています。

受講生に装丁論を説く鈴木成一さん 撮影 平林美咲

「読書百景」編集長
柏原航輔